セフレからスタートしたけど、いつかは彼氏に

セフレからスタートしたけど、いつかは彼氏に

なあ君、彼女ができないからといって、そんなに悩まないで。

モテないこの僕にだってセフレができたのだから。
そして、もっと素敵な関係になろうとしてるんだから。

「今すぐ会える人いませんか。何もかも忘れて遊びたいな!」

こんな書き込みをしていたのは、僕と同じいわき市に住む菜々子さん。
24歳のフリーターみたい。
瞳が大きいチャーミングな子。ヘアはボブスタイル。

僕は菜々子さんにくぎ付けになっちゃった。
こんな子を彼女にできたら幸せだろうな。

でも、出るのはため息。

「どうせだめだろう」
とつぶやく。

彼女いない歴25年。
彼女ができないことがずっと僕のコンプレックスだった。
就職したら彼女ができるだろうと思っていたけど、ぜんぜんだめ。
可愛い子はみんな彼氏持ち。

だったら最後の手段と出会い系に登録したのは3か月前のこと。
これでだめなら一生彼女なしの生活だ。

何回か会えた。
でも会うだけでそれから先続かない。

顔もスタイルも今いちだからだと思うけど、理由はそれだけじゃない。
ブ男を補うだけの「押し」が足りないんだと自覚している。
気にいった女性は押して押して押しまくる。
意中の彼女をゲットするにはこの精神が必要なんだ。
でも肝心なときに心臆してしまって、気持ちが萎んでしまう。
これじゃ女性は離れていくよ。

今度こそ!

可能性はわずかかもしれないけど、菜々子さんにアプローチしてみた。

「今すぐ会えますよ。顔もスタイルも今いちだけど、」

と書いて消した。
こんな書き方をするからダメなんだ。
もっと自信を持って、しっかりした文章を書かないと女性はこっちになびかないぞ。
深呼吸して書き直す。

「今すぐ会えますよ。僕も今すぐあなたに会いたい。本気です」

送信ボタンを押す。

菜々子さんが指定してきたのはいわき市郊外のコーヒーショップだった。
僕は何がなんだからわからないまま車を飛ばした。
まさか会ってくれるなんて思わなかったからね。
顔がかっと熱くなっていて、ハンドルを握る手も汗ばんでいたのを今でも覚えてる。

ここからが肝心だ。
顔パスされないように気をつけないと。

コーヒーショップでご対面。

奇襲攻撃じゃないけど、間髪入れずこう言った。

「菜々子さんに会えてよかった。
菜々子さんに会える日をずっと前から楽しみにしてたんだ。
何年も前から、菜々子さんを思っていたんだよ」

「ぷっ」
吹きだす菜々子さん。

矛盾する話なのはよくわかっている。
でもこれは車の中で考えていたセリフで、けっこう行けると思っていた。
意中の女性に対しては、論理的にどうのこうのでなく、
とにかくストレートに思いを告げることが大切だ。
これは過去の失敗から得た経験値だ。

「面白い人」
 微笑みがまぶしい。

「と、とりあえず遊びに行こう。どこがいい?何がいい?」
顔パスを避けるように第二次攻撃。

それからカラオケに行った。
食事して、もう一度お茶した。

「あ~あ。楽しかった。つうか、せいせいした。ざまみろって感じ」

「ざまみろ?」

「アイツへの復讐のつもりだったの。出会い系で遊ぶこと」

「アイツって」

「彼氏」

意気消沈。彼氏持ちだったか。

菜々子さんの話では、彼氏が浮気したらしい。
どこかの女とふたりで歩いているのを見かけたらしい。
追及すると、中学校時代の同級生で何の関係もないと言う。
たぶん嘘。
同級生にしては若すぎる。
だから自分も遊んでやろうと思った。

菜々子さんが出会い系に来た理由は要するに彼氏への復讐。
相手は誰でもよかったのかもしれない。

それに彼氏持ちということは、菜々子さんを彼女にすることは不可能だ。
僕はなんてついていないんだろう。

でもいつもとは違う自分がいた。
いつもなら項垂れて終わるんだけど、どうせ失恋するなら言いたいこと言ってやろうと、強い口調で心の内を明かした。

「僕は菜々子さんに一目ぼれしました。貴女を彼女にしたいと思ってました。
これであきらめるのは本意じゃないよ。もし1%でも可能性があるんなら、僕はその1%にかけたい」

菜々子さんの瞳がとろんと潤んだのを見逃さなかった。
女心が揺れ動く瞬間を僕は見た。
「押し」の精神とはこのことなんだって思った。 

「セフレでいい?」

「え?」

「セフレなら、付き合えるかも」

心を通わせない身体だけの関係。
セックス処理をするための相手。
それがセフレ。

それでも構わない。
女性と定期的に会えるだけで十分だ。

「そ、そ、それでもいい。僕は菜々子さんの立派なセフレになってみせる」

「ぷっ」
 また吹きだした。

かくして菜々子さんをセフレにすることができた。
でも色々と制約があったよ。

彼と鉢合わせになるかもしれないから家の近くには来ないこと。
電話はだめ。伝えたいことがあったらLINEかメール。
会うのはいわき市郊外。

面倒だし、誘い方にも気を遣う日々だった。
彼氏には内緒の情事だからしかたないのだけど。

でもベッドの中の菜々子さんを見ていると、
彼氏とうまく行ってないなって思うことがよくある。

すぐにぐっしょり濡れるし、大きな声出してイキまくるし、いろんな体位を要求する。
ひょっとして彼氏とのセックスはなくなったか。

これは好機かもしれんぞ。

僕は「押し」の精神で子宮の奥を突きまくったよ。

「イヤ・・・イヤ・・ダメエ!・・・・イッちゃう・・・アウウッッッッ!」

セフレから彼氏に昇格する日がもうすぐそこに来ていると僕は思う。

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